りんご畑で読書、時々お茶。

りんご園手伝いacoの生活メモ

落ち込んでなんにもできないときに読む本『小さなスプーンおばさん』

何を見ても落ち込む、という時期があった。

自分にないものばかりに目が向き、今までの人生あれもこれも間違えていた、これからどうしようと、来し方行く末をひたすら思い悩むというような。

朝がきても不安で布団から出られず、ご飯も食べられない。何とか気分を変えようと好きな本を読もうにも、字を目で追う気力もない。心が赤裸になっていたのか、色んな表現が怖く感じられた。

そんな時、子供用の本ならと手に取ったのが、昔読んだ『小さなスプーンおばさん』だ。


ある朝目が覚めたら、なんの前触れもなくいきなりティースプーンくらいに小さくなってしまうスプーンおばさん
でもおばさんはそのことで落ち込んだり、パニックになったりはしない。
「スプーンみたいに小さくなっちゃったんなら、それでうまくいくようにやらなきゃならないわね。」と言って、知恵と行動力で問題を解決していく。

読み進めるうちに、へこたれないおばさんの数々の事件に気をとられ、いっとき、自分の悩みが遠ざかる。
物語に出てくるパンケーキやマカロニ・スープ、ショウガ入りクッキーやコケモモのジャムに食欲が湧き、ご亭主とおばさんのやりとりに、ついには声を出して笑ってしまった。

読後、「もしおばさんのように、その年輪に貯めたぶんの機転がきくようになるのなら、年を取るのも悪くない。」と思った。
子供の頃には分からなかった、物語の味わいや明るさ、おかしみとともに、暗闇から抜け出せる思いがしたのだ。

…思いがして、でも、私の不安や布団から出られない状態がすぐに良くなったわけではなかったけれど、その後、気持ちは少しずつ、上を向いたように思う。

そして「私がおばさんと同じ年頃になってから読んだら、また違う発見があるのかな。」と、これから先の未来にも、少し楽しみを持てるようになったのだった。今週のお題「読書の秋」