りんご畑で読書、時々お茶。

りんご園手伝いacoの生活メモ

自分がこの世でひとりぼっち、と思う日に読む本『ふくろうくん』

体調を崩して家に戻ってきて、
もうすぐ10年になる。
原因はストレスということだったけれど、実感はなく、イライラしたり落ち込んでも、それらは日々の忙しさに紛れてしまう。実際に心と体のコントロールがきかなくなってようやく、自分の無理を自覚した。

すぐには良くならない体調に、
こうなったことで、この先ずっと一人ぼっちだ、という思いが、日に日に強くなる。
家族の声も耳に入らない。自分のしたことを悔やんだり恨んだり、毎日泣いて暮らした。
起き上がることができず、布団で横になったまま泣くので、中耳炎になるという、間抜けなおまけつきで。


それでも日々は過ぎていく。

小康状態のある日、ネットで、小さな絵本の表紙のふくろうが目にとまった。

私はふくろうが好きだ。
その昔、父が、ふくろうを保護して見せてくれたことがある。羽根がふわふわとして目が大きくて、愛らしい。しかしそれに反して、父が厚い革手袋をして押さえていた鉤爪は鋭利で、私は「かわいいね」と言って覗き込んでいたのだが、ふくろうの首がギョロンと回ってこっちを向いたので、ぎょっとした。鋭く曲がったくちばし。

それでも、りんごの木のうろに巣を作ったりするふくろうは、りんご畑で遊んでいる自分の仲間のように感じて、好ましかった。

父が空中に放りあげるように手を離すと、バッサバッサと飛び立ったふくろうは、まっすぐ山に帰っていく。その後、私は夜になるとたまに聴こえる鳴き声に、耳をすませていた。


小さな絵本のふくろうは、ギョロっとした目が、あの日のふくろうを思い起こさせた。ガウンを着て、ろうそくを持ち、小脇に本を抱えている。
題名は『ふくろうくん』。

ふくろうくんは二階建ての一軒家に住んでいる。気のいい一人暮らしだ。
「ふゆ」をお客さまとして家に招き入れてみたり、ある日は、自分の涙で沸かしたお茶をのんだり。ひとり海の上のおつきさまを眺めながら、おつきさまと友だちになるふくろうくんは、ひとりぼっちでも楽しく人生を過ごしていけるし、この世には、「本当にひとりぼっち」ということはないのじゃないか、という気持ちにさせてくれる。ちょっと変わった行動も、体調を崩した身には共感するものがあり、少し笑えた。

作者のアーノルド・ローベルは、『がまくんとかえるくん』シリーズの作者で、小学校の時の教科書にのっていた『おてがみ』を書いた人だと、読んだあとで気がついた。

絵も魅力的で、何度もながめる。いつかまたひとりぼっちだと思う日がきても、この本を開いて、ユーモラスに心穏やかに、月を見上げられるふくろうくんのようでありたい、と願う。